金融研究 第21巻第4号 (2002年12月発行)

種類物を用いた担保
─担保の多様化についての一視点─

山田誠一

 今日の経済社会では、担保の機能をもつ多様な取引が行われており、それらの取引の性格は、担保物権を伴うかどうか、被担保債権が特定しているかどうか、担保の目的が特定しているかどうか等、多元多層的な構造をもつに至っている。そのなかで注目をすべきは、種類物を担保の目的とした取引が行われているということである。この種類物を担保の目的とした取引を、譲渡担保として法律構成をすることができないかが本稿の問題関心である。不動産譲渡担保についての判例による規律の内容を手がかりにして、種類物を目的とした譲渡担保の法律構成を検討すると、以下のような解釈論的主張を導くことができる。(1)債務者が被担保債権を弁済しない場合、債権者は、担保設定時に引き渡された物と同種・同等・同量の物の返還請求権を適正に評価して、その価額から被担保債権額を差し引いて残額があれば、それを清算金として、債務者に支払わなければならず、(2)債権者は、弁済期の前後を問わず、担保設定時に引き渡された物を、第三者に、何ら制約なく譲渡することができ、(3)債務者は、被担保債権を弁済すれば、担保設定時に引き渡した物と同種・同等・同量の物の返還を請求することができるというものである。

キーワード:譲渡担保、種類物、種類物を目的とした譲渡担保


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