金融研究 第21巻第4号 (2002年12月発行)

為替レートと経済調整:
新しい開放マクロ経済学の視点から

モーリス・オブストフェルド

 新しい開放マクロ経済学によって、経済学者は新たなツールを使って古典的な問題に取り組むことが可能になっている。その一方で、新しい開放マクロ経済学は、新たなアイディアや問題を生み出している。実証的な規則性を新たなモデルに取り入れる試みによって、経済学者は、国際的な財の価格設定に関するさまざまな仮定、とくに、市場別の価格設定(pricing to market)や輸出財の最終消費地の通貨を使った価格設定のモデルを検討している。そうしたモデルの中には、為替レート変動は国際的な支出切換え効果(international expenditure-switching effects)が乏しいことを示しているモデルもあり、それゆえ、国際的な調整における為替レートの役割に関して、根本的に再検討することが必要となっている。本稿は、最近の為替レートに関する悲観論の復活は、実証的な証拠からではなく、単純化されすぎたモデル設定という研究上の戦術から生じていることを議論する。第2次大戦後の早い時期に生じた極端な「弾力性悲観論」をはじめとするかつてのエピソードと同じく、為替レートに関する悲観論は実証的結果の誤解から生じている。

キーワード:為替政策、国際的な調整、支出切換え効果、弾力性悲観論、国際競争


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