金融研究 第21巻第3号 (2002年9月発行)

通貨発行権に関する考察
─ドイツおよびEUの文脈─

櫻井 敬子

 今日、電子マネーの登場を契機として通貨とは何かが改めて問題とされ、国家の通貨発行権およびこれを独占的に行使する中央銀行の役割に対する懐疑論も唱えられている。しかし、わが国の日本銀行法に強い影響を与えたドイツの中央銀行制度は、通貨発行権が国家の主権(Hoheitsrecht:高権)そのものであり、通貨発行は国家および公法人たるブンデスバンクがこれを担うという考えによって支えられており、そのような前提のもとで、独立性を備えた中央銀行が政府当局に対抗して通貨発行権を行使するという独特の制度が構築された。そして、EUの通貨統合に伴って設立されたヨーロッパ中央銀行は、このドイツ・モデルに依拠しており、国家の通貨発行権をEUという国家連合に対して移譲するに当たり、その移譲手続およびブンデスバンクよりも一層独立性を強めたヨーロッパ中央銀行の民主的正当性が改めて問われている。こうしたドイツおよびEUの動きが、中央銀行の「脱国家化」ともいうべき一連の議論にとってどのような意義をもち得るのかについて、ドイツの近代的通貨制度の成立から通貨統合にいたるまでの法制度の変遷を跡づけることにより検討する。

キーワード:電子マネー、ブンデスバンク、ヨーロッパ中央銀行、通貨統合、通貨発行権、強制通用力、私的通貨


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