金融研究 第21巻第3号 (2002年9月発行)

PTM(Pricing-to-Market)と金融政策の国際的波及効果
─「新しい開放マクロ経済学」のアプローチ

大谷 聡

 企業の価格設定行動に関する実証分析によると、わが国企業は為替レート変動を輸出価格にあまり転嫁しない(わが国企業の多くはPTM〈pricing-to-market〉に基づいた価格設定を行っている)一方、米国企業は為替レート変動をほぼ完全に輸出価格に転嫁している。本稿は、企業の価格設定行動の違いが金融政策の自国・外国経済への波及効果に及ぼす影響について、「新しい開放マクロ経済学」の枠組みにのっとり、自国・外国企業の価格設定行動の違いを明示的に導入したモデルで検討した。理論モデルによれば、自国・外国の金融政策の国内・世界経済への波及効果は、自国・外国企業の価格設定行動によって大きく影響される。日米企業の価格設定行動を近似した数値解析によれば、わが国における高いPTM企業比率は、わが国金融政策の国際的波及効果を米国金融政策に比較して極めて小さいものとする。金融政策の運営に当たっては、企業の価格設定行動にも注意を払うことが重要である。

キーワード:新しい開放マクロ経済学、購売力平価(purchasing power parity: PPP)、PTM(pricing-to-market)、金融政策、近隣窮乏化効果


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