金融研究 第21巻第2号 (2002年6月発行)

通貨危機への対応策としての流動性供給の意義について
─最近の理論および実証研究からのインプリケーション─

服部 正純

 ある国の通貨危機がそのファンダメンタルズの悪化のみで発生したのであれば、通貨危機からの回復は同国のファンダメンタルズの改善のみによって達成される。一方、ファンダメンタルズに問題がなくとも、一時的な流動性の枯渇が通貨危機の原因となったのであれば、外部からの流動性供給が効果を持つと期待される。こうした問題意識から、本稿では、過去の通貨危機の発生原因、通貨危機を深刻化させた要因、通貨危機が実体経済に波及するメカニズムに関して、主に東アジア通貨危機以降の研究を中心に展望する。これらの研究成果は、長期的には対外債務返済能力に問題がない国が一時的に流動性危機に陥ったケースや、通貨危機の深度がファンダメンタルズにより説明できる程度を超えたケースが存在してきたことを示しており、通貨危機発生時における緊急の流動性供給の効果と必要性に一定の支持を与えるものと考えられる。

キーワード:通貨危機、債務返済能力(solvency)、流動性枯渇(illiquidity)、複数均衡、グローバル・ゲーム(global game)、地域金融協力


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