金融研究 第21巻第2号 (2002年6月発行)

保管受託者(custodian trustee)を用いた信託とその法的諸問題

道垣内 弘人

 信託業務の複雑化・高度化にともない、英米では、保管受託者を運用受託者とは別に選任することが一般的になっている。わが国でも、近時、保管業務のみを行う信託銀行がいくつか設立され、年金信託等では、運用受託者と保管受託者の分離が生じている。
 現在、実務で行われている具体的方式としては、再信託方式と共同受託方式とがある。しかし、いずれの方式についても、その有効性や法的効果が十分に検討されてきたとはいえない。本稿では、これらの問題、および、それに付随する諸問題を検討した。検討結果は大まかにいえば、次のとおりである。
 再信託方式は、受託者の自己執行義務の例外として「代人」の利用について定めている信託法26条の規定の存否にかかわらず、有効であると考えるべきであり、また、仮に、再信託受託者を同条にいう「代人」とみたときであっても、責任関係について特約が可能である。
 共同受託方式は、受益者の承認があれば、他の共同受託者の承認がなくても、採用可能なスキームであり、また、その責任関係においては、信託財産が共同受託者間の合有になっていることを前提とする信託法の諸規定の適用はないというべきである。

キーワード:信託、再信託、共同受託、運用受託者、保管受託者


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