金融研究 第21巻第1号  (2002年3月発行)

フィリップス曲線と価格粘着性
— 産業別データによる推計 —

渕 仁志、渡辺 努

 本稿では、産業別にニュー・ケインジアン型フィリップス曲線を推計し、価格の粘着性を計測する。本稿の推計方法の特徴は、生産量の変動に連動する度合いの高い生産要素として、中間投入を用いて限界費用を計測している点にある。産業別の推計結果によれば、価格の粘着性は各産業で有意に検出され、しかも粘着性の度合いは産業間でばらつきが大きく、その差は統計的に有意である。製造業の中では素材系の業種で価格粘着性が低く、加工系の業種で価格粘着性が高い。平均的な価格改訂間隔は、素材系の業種で1~4四半期、加工系の業種で2~7四半期である。一方、製造業とサービス業を比較すると、サービス業では平均改訂間隔が7四半期超と長く、製造業と比べ粘着性が高い。こうした傾向は、バックワード・ルッキングに価格を設定する企業の存在を考慮するなど、推計式の定式化を変更しても不変である。また、価格の下落局面と上昇局面で粘着性を比較すると、下落局面で粘着性が高く、その差は統計的にも有意である。産業間で価格粘着性の度合いに有意な差があるとの計測結果は、中央銀行の政策目標とすべき物価指標が生計費指数として定義される物価指数と異なる可能性を示唆している。

キーワード:価格粘着性、ニュー・ケインジアン型フィリップス曲線、金融政策、限界費用、中間投入


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