共和分分析の概念を拡張し、外生変数の存在下における攪乱項の単位根検定の手法を開発し、翌日物金利と他の市場金利との共和分関係の存在をチェックし、次の3つの結論を得た。
(1)翌日物金利が金融政策の誘導対象であると広く認識された1995年以降、翌日物金利と1年物までの金利の間に共和分関係が認められるが、翌日物金利とより長期の金利の間にはそれが認められない。
(2)1995年以降のデータで、翌日物金利に加え、より長期の金利を説明変数として追加したとき、一部のケースを除いて、他の長期市場金利との間に共和分関係は認められない。
(3)翌日物金利が政策誘導の対象として認識される以前、1988年から1993年までの翌日物金利と他の市場金利の間には、共和分関係が認められない。
結論(1)は、翌日物金利による市場金利のコントロールが1年物以内の金利に対しては安定的であるが、それ以上の長期金利に対しては安定的でないことを示す。結論(2)は、翌日物金利に加え、仮により長期の金利を政策誘導の対象として追加採用しても、他の長期市場金利のコントロールが安定的になるとは認められないというものである。結論(3)は、翌日物金利の政策誘導対象としての認識が高まった以前と以降では、翌日物金利と他の市場金利との関係が全く異なることを示し、政策金利に関する市場の認識の変化が金利構造を変化させた可能性を示唆するものである。
キーワード:外生変数、共和分、単位根、翌日物金利
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