金融研究 第20巻別冊第1号 (2001年4月発行)

本邦株式市場の流動性に関する動学的考察
—東京証券取引所のティック・データ分析—

村永 淳

 本稿の目的は、日本の株式市場を対象として市場流動性の動学的な側面を研究することである。具体的には、東京証券取引所の電気機器指数を構成している個別株式のティック・バイ・ティックの市場データを用い、カイルが示した市場流動性の3つの概念(価格指標性<tightness>、市場の厚み<depth>、市場の回復力<resiliency>)に対応する代理指標について分析する。このうち1番目の指標はビッド・アスク・スプレッドとして計測される。2番目の指標はマーケット・インパクトであり、取引執行に伴うクォートの変化率を出来高で割った値として算出される。3番目の指標は市場弾力性であり、取引後のビッド・アスク・スプレッドの収束速度として算出される。1995年10月2日から1996年9月30日までの観測期間においてクロス・セクション分析を行い、これらの3つの指標と取引頻度の関係について調べた結果、各指標で表される市場流動性と取引頻度の間にはそれぞれ正の相関が存在することがわかった。また、1998年4月13日に東京証券取引所が実施したティック・サイズ(価格変動幅の最小単位)の切下げの影響についても分析を行った。この制度変更前後55営業日のさまざまな指標を分析した結果、ティック・サイズの切下げはビッド・アスク・スプレッドや価格ボラティリティを縮小させ、取引頻度を増加させたことがわかった。これらの結果は、ティック・サイズの切下げが市場の流動性および効率性を向上させたことを示唆している。

キーワード:市場流動性、ビッド・アスク・スプレッド、マーケット・インパクト、市場弾力性、ティック・データ


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