金融研究 第20巻第4号 (2001年12月発行)

わが国金融システムの将来像
―変革の圧力と金融当局の役割―

馬場直彦、久田高正

 1980年代、日本経済の持続的な成長を支える重要なシステムとして脚光を浴びたメイン・バンク制を中心としたわが国金融システムは、1990年代入り後、バブル経済の崩壊とともに機能不全に陥った。代わって、米国の直接金融(資本市場)を中心とした金融システムが今や時代の潮流との見方も多い。情報技術革新やグローバル化の進展、金融規制緩和などの「金融を巡る環境変化=変革の圧力」は、市場や銀行の機能、役割、相互関係に大きな影響を及ぼしつつある。そうした変革の圧力のもとで、金融システムの効率性・安定性を維持・向上させるための直接金融と間接金融の最適バランスも変わってきている可能性が高い。この間、欧州でも、各国金融システムは資本市場を従来以上に活用する方向に変化しつつある。本稿は、こうした金融環境の変化と歴史的展開、公的金融のプレゼンスの大きさ等わが国特有の金融構造を踏まえたうえで、わが国金融システムの将来像を展望するとともに、今後金融当局に期待されるシステム設計・運営上の役割を考察している。

キーワード:金融システム、メイン・バンク制、情報技術革新、金融規制、銀行監督、公的金融、コーポレート・ガバナンス


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