金融研究 第20巻第3号 (2001年9月発行)

明治初期の財政構造改革・累積債務処理とその影響

大森 徹

 本稿では、歴史上、抜本的な財政構造改革が行われた事例について、その背景、経緯と影響をみるために、明治維新後に明治政府によって進められた財政構造改革と累積債務処理、具体的には、旧幕藩体制下の財政構造を抜本的に改革したと考えられる秩禄処分と地租改正、ならびに旧体制から明治維新にかけて累積した旧藩債務の処理についての整理を試みた。まず、明治政府の財政バランス、プライマリー・バランスの推移を概観し、経常歳入・歳出のベースでみると、明治維新後の比較的早い時期の1875年頃には均衡財政が達成されていたことを示す。次に、財政バランス等の改善の背景にある秩禄処分、地租改正、累積債務処理の推進過程を「量的削減」政策が進められた改革前期(1871~1872年頃)、「質的変更」政策が進められた改革後期(1873~1876年頃)に大別し、改革前期の「量的削減」政策は当時の実体経済活動に対してデフレ・インパクトを与えた可能性があると考えられること、改革後期の地租改正を中心とする「質的変更」政策がその後の明治政府の財政運営スタンスや景気変動パターンに大きな影響を与えた可能性を示す。また、西南戦争後の「大隈財政」期、「松方財政」期の経済政策について、「質的変更」政策の影響が顕現化する形で、結果として、財政・金融面から景気変動を増幅するような政策が採用された可能性を論じている。

キーワード:財政構造改革、政府債務処理、財政バランス、秩禄処分、地租改正、大隈財政、松方財政


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