金融研究 第20巻第2号  (2001年4月発行)

資産担保証券の信用補完に関する法律問題

寺山 大右

 近年の法整備や金融技術の進展により、わが国でも、企業が保有する資産のキャッシュ・フローに基礎を置き、企業の信用リスクを切り離した形で資金調達を行うアセット・バックト・ファイナンスが活発化しつつある。本稿は、アセット・バックト・ファイナンスの代表例である資産担保証券(Asset Backed Securities、以下ではABSと呼ぶ)の元利金支払債務に対して第三者が信用補完をなす場合(信用補完)について、保証契約、損害担保契約、保険契約を利用した場合のおのおのの法律問題を検討し、以下の点を指摘している。

 まず、保証契約を利用する場合、責任財産限定特約と保証の附従性(民法448条)との関係が問題となる。しかし、責任財産限定特約は、ABSの元利金支払債務のうち特定資産から弁済されない債務を「責任なき債務」ないし「自然債務」にするものであると捉えられ、保証人はこのことを保証契約締結の際に予測していると考えられるため、保証の附従性(民法448条)により保証債務が「責任なき債務」ないし「自然債務」となることはなく、保証契約を利用することに問題は生じないものと考えられる。次に、損害担保契約を利用する場合には、特定目的会社(Special Purpose Company、以下ではSPCと呼ぶ)を要約者、信用補完者を諾約者、SPCが債務不履行となった際にABSを所持している投資家を第三者とする「第三者のためにする契約」(民法537条)と構成すれば、損害担保契約を利用可能であると考えられる。もっとも、損害担保契約は、保証契約や保険契約とは異なり法律に直接規定された契約類型ではないため、法的不確実性が残るという問題がある。最後に、保険契約を利用する場合には、「不特定の他人のためにする保険契約」と構成すれば、保険契約を利用できると思われる。ただし、保険契約を実際に利用する場合には、いくつかの契約上の工夫が必要となろう。

キーワード:債権流動化、資産担保証券、信用補完、責任財産限定特約、保証、損害担保契約、保険


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