金融研究 第20巻第2号  (2001年4月発行)

失業に関する理論的・実証的分析の発展について
—わが国金融政策へのインプリケーションを中心に—

中田(黒田)祥子

 本稿では、わが国失業率の現状把握に有益と思われる労働経済学、マクロ経済学の理論と実証分析をサーベイし、わが国への適用可能性を検討するとともに、金融政策と労働市場との関連について若干の考察を行った。
 これまでわが国では、企業内教育、長期勤続・年功賃金といったいわゆる日本的雇用慣行が、小さな規模のショックに対しては緩衝剤となって、うまくワークしてきた。本稿では、長期的なコミットメントが不可能になってしまうような経済成長率の低下が生じた場合には、こうした種々の要素は、かえって失業を長期化させる要因となり得ること、ヒステリシス、サーチ理論のどちらの枠組みを用いても、わが国の均衡失業率が少しずつ上昇傾向にある可能性について述べた。
 さらに、最終章では、こうした均衡失業率の変動には、過去に起きたマクロ・ショックの影響とミクロ・ショックの影響の両方が混在している可能性を示唆した。わが国の労働市場が、大きなマクロ・ショックにも影響を受けやすい体質であることを考慮すると、金融政策は普段から労働市場の動向を詳細に分析し、予防的な政策運営に努めるべきであることを指摘した。

キーワード:金融政策、失業、均衡失業率、ヒステリシス、サーチ理論


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