金融研究 第20巻第1号 (2001年1月発行)

資産価格と物価: バブル生成から崩壊にかけての経験を踏まえて

白塚 重典

 資産価格が金融政策に関係する理由としては、(1)資産価格の動きが物価を含む経済の先行きに関する期待についての情報を含んでいること、(2)資産効果に伴い支出変動が生じること、(3)資産価格の変動が、企業、家計、金融機関のバランスシートに影響を与え、それを通じて金融システムと実体経済活動に大きな影響を与えること、が挙げられる。また、資産価格は、しばしば、ファンダメンタルズから乖離し得る(いわゆるバブルの発生)。バブルの弊害は、資産価格の予期せざる水準訂正に伴う実体経済、金融システムに対するストレスの発生によると理解されるが、その実体経済活動に及ぼす影響は、上昇時のインパクトに比べ、下落時のインパクトが非対称的に大きく、物価安定を損なうリスクを孕む。したがって、金融政策は、資産価格変動の背景を的確に分析し、そこに示されている期待が持続可能なものであるかどうかを検討し、将来のインフレ・デフレのリスクを意識しながら予防的に対応する必要がある。そのために、中央銀行は、物価の安定を「持続的な物価安定」という観点からとらえ、表面的な物価指数の変動の背後にあるさらに大きな、持続的な経済成長とそのための基礎的な前提条件であるマクロ経済環境の安定を実現していくことが重要である。

キーワード:潜在的なリスク、予防的な政策運営、持続的な物価安定、金融システムの安定


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