金融研究 第20巻第1号 (2001年1月発行)

公的年金と地方自治体における会計および政策評価のあり方

古市 峰子、宮田 慶一

 公会計の改革および政策評価システムの整備を巡る議論では、市場規律が働きにくい公的部門において、会計や政策評価から得られる情報を用いて、公的主体を効率化に向けていかに規律づけていくかが1つの重要なテーマである。こうした規律づけのあり方は、政策評価の対象となる公的主体の特徴にも依存すると考えられるが、本稿では、民間との競合性およびプリンシパル・エージェントの関係の2点において両極をなすと考えられる公的年金および地方自治体を題材に、公的主体の特徴により規律づけのあり方がどのように異なり得るのかについて検討している。
 このうち、公的年金のように、その運営目的が資産価値の最大化に集約可能な公的主体については、企業年金と比較可能な会計情報の提供などを通じて、市場メカニズムの活用による規律づけが可能となる。もっとも、公的年金については、モラルハザードや逆選択の問題から、完全な民営化が選択肢となり得ないとの考え方もあり、市場メカニズムの活用のみでは規律づけが不十分となる可能性がある。したがって、例えば、公的年金に対するガバナンスは国に残しつつも、その運営は民間に委託するなど、規律づけを強化するための仕組みが必要となろう。
 一方、地方自治体のように、主に民間では提供が困難なサービスを扱っており、さらに複数のサービスを同時に提供する公的主体は、効率化に向けての規律づけが容易ではない。こうした公的主体については、(1)市場メカニズムの活用による規律づけと、(2)アカウンタビリティの向上による規律づけ、の2つのアプローチが考えられるが、どちらのアプローチにもメリット、デメリットがある。したがって、いずれのアプローチをとるにせよ、活動基準原価計算や業績測定システムの導入などにより、それぞれの抱えるデメリットをカバーしつつ、効率化に向けての規律づけにつながるような政策評価システムを構築することが肝要である。

キーワード:公会計、政策評価、規律づけ、公的年金、地方自治体、活動基準原価計算、業績測定


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