金融研究 第19巻別冊第1号  (2000年4月発行)

日本の銀行業における全要素生産性と仲介・決済サービス

大森 徹、中島 隆信

 本稿では、銀行業の決済機能を単なる為替取引のみではなく、銀行業が預金の受入と貸出を併せて行っていることによって、決済手段としての預金通貨を創造しうるという点が銀行業の決済機能の供給にとって本質的に重要な点であると考え、短期の貸出を決済サービスの一部として取り扱うと定義したうえで、銀行業の固有業務を大きく決済サービスと金融仲介サービスに区分した。次に、95年度の資金量平残ベース(長信行、信託行を除く)で1~10位の銀行から6行、同11~30位から7行、同31~60位から7行を任意に抽出し、この対象行20行の有価証券報告書を利用して、ユーザーコスト・アプローチにより、対象行20行の金融資産・負債の各項目を投入・産出に振り分け、1987~1995年度の両サービス等の生産性とTFPの推移についての特徴点を整理した。そのうえで、金融資産・負債の投入・産出への振分結果をもとに、本稿で定義した決済サービスと金融仲介サービスとの間に何らかの「範囲の経済性」が存在するか、それによって銀行業がどのような便益を得ているのかという点を検討した。その結果は両サービスを併せて供給することによる範囲の経済性は費用節約効果という形で確認されたが、この費用節約効果は銀行業の規模によって変化しており、総資産規模の大きい銀行ほど費用節約率が大きいというものであった。なお、本稿の分析結果を踏まえ、情報技術革新と銀行業との関係やナローバンク論へのインプリケーションも併せて整理している。

キーワード:ユーザーコスト・アプローチ、費用関数、銀行業のTFP、範囲の経済性


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