金融研究 第19巻別冊第1号  (2000年4月発行)

バイオメトリックスによる個人認証技術の現状と課題
— 金融サービスへの適用の可能性 —

中山 靖司、小松 尚久

 本稿は、バイオメトリックスによる個人認証(バイオメトリック認証)について、金融サービスへの適用を想定しつつ、その概要、研究開発動向、標準化動向、安全性評価、実用化事例等を紹介したものである。
 近年、情報技術の進展によって、金融サービスのほとんどはコンピュータ・ネットワーク・システムによって提供されるようになってきており、利用者がインターネット等を通じて自宅のパソコンからサービスを受けることも可能になってきている。ネットワークを介してサービスを提供する場合には、サービスを受けようとしている相手の真正性を確認することが重要である。しかしながら、キャッシュカードと暗証番号の組合せなど、既存の金融サービスで用いられている一般的な本人確認方法は、安全性の面から必ずしも確実な手段とはいえず、多くの課題を抱えている。そこで、安全で確実に本人を確認する手段として、バイオメトリック認証が注目されている。
 バイオメトリック認証とは、対象者の身体的特徴(指紋、網膜等)や身体的特性(筆跡、音声等)などの対象者個人に固有の情報をあらかじめ計測してシステムに登録しておき、取引の都度測定する本人の特徴・特性が登録データと合致するかどうかによって相手の真正性を確認する方法である。バイオメトリック認証は、本人であることを証明するために何かを携帯したり、暗証番号を記憶する必要がなくなる可能性もあり、利用者にとって利便性が高いほか、既存の個人認証方式よりも高度なセキュリティを実現することが期待できる。現在、多くの産業分野で実用化が進みつつあるが、金融取引の安全性を高める手段としても検討に値する認証技術と考えられる。

キーワード:バイオメトリックス、バイオメトリック個人認証、個人認証、金融サービス、標準化、認証モデル


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