金融研究 第19巻第2号 (2000年6月発行)

金融政策ルールとマクロ経済の安定性

木村 武、種村 知樹

 本稿は、フォワードルッキング・モデルに基づいた確率的シミュレーションによって、金融政策ルールとマクロ経済の安定性について分析したものである。シミュレーション結果の頑健性について、今後さらに分析を積み重ねていく必要があるが、本稿で得られた結論は次のとおりである。

・経済の先行き予測に基づいて政策運営を行うフォワードルッキング・ルールは、経済の足許の動きのみに基づいたバックワードルッキング・ルールに比べ、マクロ経済の安定性をもたらす。この意味で、フォワードルッキング・ルールは、効率的な政策ルールといえる。
・フォワードルッキング・ルールに基づいた政策運営を遂行する際には、物価安定に強く コミットすることが重要で、景気安定のウエイトを高めるとかえって経済を不安定化させる。とくに民間部門の期待形成が先見的になればなるほど、景気安定にコミットすることのデメリットが大きくなる。これは、中央銀行が景気に振られやすいことを民間部門が知る結果、インフレ期待が不安定化し、実質金利の不安定化につながるためである。
・為替レートの安定化を金融政策の直接の目的とすると、マクロ経済の安定性を大きく損なう。
・潜在成長率が低いもとでは、効率的なフォワードルッキング・ルールを採用しても、目 標インフレ率を低く(ゼロに)設定すると、金利のゼロ制約を受ける確率を高め、マクロ経済を不安定にする可能性がある。

キーワード:金融政策ルール、インフレーション・ターゲティング、フォワードルッキング・モデル、金利のゼロ制約


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