本稿は、ナロー・バンクの概念整理を行い、その意義を理論的に検証することを目的とする。まず、従来より唱えられてきた主なナロー・バンキング提案を、①運用資産の種類、および②預貸業務の併存合理性、という2つの座標軸に基づいて類型化した。次に、預金の流動性リスクから銀行取付の発生メカニズムを説明する理論モデルと、預貸業務間における流動性の相乗効果を分析した理論モデルの2つを用いて、各提案の正当性を評価した。その結果、望ましいナロー・バンク像とは、限定的ながら預貸業務の融合を認め、そのほかの資産を短期安全資産への運用に限定したものである可能性が明らかになった。
キーワード:ナロー・バンク、銀行取付、預貸業務の併存合理性、流動性
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