ネットワーク環境における電子マネーの支払いは、通常、支払者と受取者がインターネット等のネットワークによってオンラインで接続され、数回の情報のやり取りをリアルタイムで行うことによって実現されている。受取者が電子商店等の場合には、通常、いつでも顧客からの取引の申し出を受付けられるようにサーバーをインターネットに常時接続しているため、電子マネーの支払いの申し出に対しても、リアルタイムにレスポンスでき、顧客である支払者の都合によっていつでも取引を行うことが可能と考えて差し支えない。しかしながら、個人間で電子マネーの譲渡を行おうとした場合に、電子マネーの受取者となる一般の利用者は、インターネットを利用する度にパソコン等の機器をダイヤルアップで接続していることが多く、いつでも電子マネーの受け取りができるような待機状態にあるとはいえない。したがって、このような取引を行うことは現実的には運用上困難と考えられる。
そこで、支払者と受取者がネットワークでオンライン接続されている必要がなく、リアルタイムで通信を行わなくても、例えば電子メールに情報を添付することなどにより電子マネーを支払う(送金する)ことが可能な方法をいくつか提案する。また、それらの方法のうち、最も実装が容易であると考えられる方法について、ICカードを用いて実際に実装を試みた過程で生じた問題点およびその対策についてまとめる。
キーワード:電子マネー、非リアルタイム、チャレンジーレスポンス、電子メール
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