金融研究 第18巻第5号  (1999年12月発行)

公法的観点からみた日本銀行の業務の法的性格と運営のあり方

 本稿は、公法・商法学者(塩野宏、神田秀樹、宇賀克也、安念潤司、斎藤誠)の各氏をその構成メンバーとする「公法的観点からみた中央銀行についての研究会」における委員方の分析・検討を、事務局(日本銀行金融研究所)が暫定的に取纏めたものである。
 中央銀行は、その嚆矢たるリクスバンクやイングランド銀行が民間出資の銀行として設立されるなど、沿革的には民間に出自をもつ存在といえる。また、現在も、各国の中央銀行のなかで、純粋な行政内部の機関としての地位を与えられているものは少なく、むしろ多くは、行政と民間の2分論のなかでは中間的な存在として捉えられている。この点、日本銀行も当初は株式会社として設立され、今日も行政と民間の中間的な存在として認識されているようにみえる。また、日本銀行の業務は多岐にわたり、その性格は一律ではないと考えられることから、日本銀行は「官」の顔と「民」の顔をもつとしばしばいわれる。
 そこで、本研究会では、日本銀行の個々の業務――具体的には、「金融政策」、当座預金取引と決済業務、銀行券の発行、「最後の貸し手」機能、考査、「政府の銀行」としての業務、調査・研究――の法的性格を分析し、また、こうした分析から導かれる当該業務運営の規律付けのあり方についても、公法(行政法等)的観点と、私法(商法等)的観点の比較検討を行いつつ分析した。
 本稿の構成は、以下のとおりである。まず、第1章において問題提起を行った後、第2章において本研究会の基本的なアプローチを提示している。次に、第3章において日本銀行の個々の業務の法的性格とその運営のあり方等に関する具体的な検討の結果を整理している。最後に、第4章では、本研究会の分析・検討の結果を小括しつつ、残された課題を指摘している。

(本報告書は、当初、1999年10月に公表された。その後、『金融研究』への掲載〈1999年12月〉に当たり、若干の編集上の変更が加えられている。)


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