金融研究 第18巻第4号 (1999年9月発行)

江戸時代における改鋳の歴史とその評価

大塚 英樹

 江戸時代には、金貨や銀貨の重量や金・銀の含有量を変更する貨幣の「改鋳」が数次に亘って行われ、金座などの貨幣鋳造機関や、両替商など商人を主体とする機関が、政府部門と民間部門との仲立ちとなって新旧貨幣の交換業務に携わった。
 貨幣改鋳は基本的には徳川政権の政治体制であった幕藩体制を経済的に支える米の価格を調整することを目的としたものであると考えられるが、各改鋳時における背景については、貨幣鋳造益に着目した幕府の財政補填、マクロ経済実態を眺めた貨幣数量の調整、金銀相場の内外格差の是正など、さまざまな理由を挙げることができる。また、こうした改鋳の歴史は、ある意味で徳川政権が自らの貨幣制度を確立していくプロセスとみることもできる。そうした中で、注目すべきは、徳川政権において貨幣体系の中心に据えられた金貨が、一両という共通した額面価値を付与されていたにもかかわらず、改鋳によって品位が変更され、その実質価値が異なった場合には、「増歩」と呼ばれるプレミアムを付加して旧貨幣と交換された点であろう。つまり、江戸期の金貨は、形式的には一定の額面をもった計数貨幣であったが、少なくとも文政期までは含まれる金の純分量によって価値が変動するという意味で、秤量貨幣としての性格をもった貨幣であったわけである。金貨が純分量に依存せず額面価値で通用し、金貨を中心としたわが国独自の貨幣制度が確立するのは天保期になってからのことである。

キーワード:貨幣改鋳、金座、両替商


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