金融研究 第18巻第3号 (1999年8月発行)

ゼロ・インフレ下の金融政策について
― 金融政策への疑問・批判にどう答えるか ―

翁邦雄

 近年、日本経済は、巨額の不良資産や大幅な需給ギャップの存在のもと、厳しい経済情勢が続いているものの、アグレッシブな金融政策により、概ね物価安定を保ち、デフレーションを免れている。それにもかかわらず、日本銀行の金融政策については、さまざまな角度から疑問・批判が提起されている。具体的には、なぜインフレーション・ターゲッティングを採用しないのか、長期国債の買い切りオペ増額を拒むのはなぜか、金融緩和のさなかに資金吸収オペをするのはなぜか、などが代表的なものであろう。本稿は、①日本銀行は長い目で見た物価の安定を通じて国民経済の健全な発展に資するために必要な対応をとる、②その際、効果との対比で副作用が大きすぎ、長期的にみて①の達成を妨げる対応はとらない、という2つの行動基準を設定し、これに照らして、ゼロ・インフレ下の日本銀行の金融政策運営を巡る論点整理を試みたものである。

キーワード:金融政策、ゼロ金利、 長期金利、インフレーション・ターゲッティング、国債買い切りオペ、量的緩和、 超過準備、ベースマネー、バランスシート問題、流動性の罠


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