金融研究 第18巻第3号 (1999年8月発行)

プルーデンス政策の将来像に関する一考察:銀行システムの効率性・安定性の両立へ向けて

小田 信之、清水 季子

 本稿の目的は、銀行業に対する公的介入(プルーデンス政策)のあり方について、経済学の視点から検討を加え、銀行機能の効率性と安定性を両立させるためにはどのようなシステムを形成すべきかを考えていく上での検討材料を提供することである。
 本稿の基本的な考え方は、銀行機能の効率性を引き出す上では市場メカニズムの活用が有効であるとともに、各種の市場の失敗に対処する上で最適性が満たされれば公的介入は正当化され得る、というものである。ここでの市場の失敗とは、(1)銀行とその債権者(特に小口預金者)の間に情報の非対称性があること、(2)銀行の流動性危機(イリクイディティ)や支払力喪失(インソルベンシー)がネットワーク的に他行に波及するという負の外部性があること、である。これにより、①小口預金者の損失負担、②流動性不足によるソルベントな銀行の破綻、③銀行のイリクイディティの連鎖、④銀行のインソルベンシーの連鎖、といった各種のリスクが発生し得る。これらへの公的介入の方法について検討した結果、①に対しては可変料率の預金保険制度や早期閉鎖措置、②と③に対しては中央銀行によるLLR機能の発動、④については外部性を内部化するためのチャージ制度の導入などが有効であるとの結論を得た。
 本稿の議論は、銀行システムに関わる各主体について一定の仮定を置いた下で導かれた理念的なものであり、現実の政策を決定する上で必要な要素を隈なく網羅するものではない。ただ、こうした理念的整理を出発点として、今後、より具体的なシステムデザインのあり方に関する議論が一段と活発化することを期待したい。

キーワード:プルーデンス政策、 市場規律、LLR、預金保険、自己資本比率規制、システミックリスク


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