金融研究 第18巻第3号 (1999年8月発行)

金融市場のグローバル化:現状と将来展望

翁 邦雄、白川 方明、白塚 重典

 金融市場におけるグローバル化の進展は、半ば常識と考えられている。確かに、過去数十年の間に、国際金融市場は大きく拡大し、外国為替市場や資本市場における取引量は大幅な増加をみた。また、情報・通信技術の進歩や各国資本市場の自由化の流れ、あるいは新しい金融取引手法の発展は、国際的な資本移動を活発化させ、国際金融市場の拡大と効率化を促す方向に作用してきた。
 ところが、データをみると、国境は資本移動に対して何らかの障壁になっていることが示唆される。投資家のポートフォリオは国内資産へ偏向しているとのホーム・バイアスが存在しているし、各国の貯蓄は各国市場で吸収される傾向が強いとのフェルドシュタイン=ホリオカ・パラドックスが観察され、ネット資本移動の大きさは歴史的にみても拡大しているわけではない。
 もっとも、グローバル化の進展状況は、例えば、デリバティブ取引といったオフバランス面も併せて考えると姿が変わってくる。資本取引の増加には資金フローの増加という要素とこれに随伴するリスク移転の増加という要素があるが、クロス・ボーダーのデリバティブ取引は後者のリスク移転をより効率的に行うものである。換言すると、デリバティブ取引の発達によって、過去に行われた投資のストックも含め、各国の金融資産の価格裁定がより一層円滑に働くようになっていると考えられる。
 今後、金融市場のグローバル化がどのように、どのようなテンポで進展していくか、との問題は中央銀行の政策運営にとって大きな意味を持つ。例えば、もし金融市場の統合化が一段と進展し、国際資本移動が活発化すれば、①独自の金融政策、②資本移動の自由化、③為替レートの安定化、の3つが併存し得ないとの状況がより明確化しよう。また、プルーデンス政策の面でも資産価格の国際的な連動性が高まるといったことを通じ、金融システムの安定性に対し、新たな問題を投げかけることも考えられよう。

キーワード:グローバル化、 中央銀行、国際資本移動、金融政策、金融システムの安定


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