本稿では、CPIの個別品目の価格変化率を利用して、基調的な物価変動成分を抽出することを狙った「CPI刈り込み平均指数」の特性を分析する。
分析によると、個別品目の価格変化率分布の両裾15%ずつを控除した「CPI刈り込み平均指数」は、従来、基調的なインフレ率を反映する指標として広く用いられてきた「CPI除く生鮮指数」と比較し、特定品目の極端な価格変動によって生じる物価指数の一時的変動をより効果的に控除しており、基調的なインフレ率を示す指標としての有用性が高い。
現在のインフレ率に、こうした品目限定的・一時的要素がどの程度影響しているかを評価する際には、『価格が極端に変動している品目の価格変化率と、他の様々な品目の平均的な価格変化率との間の乖離幅』に注目することが有用である。こうした視点から、物価変動の基調的要素と一時的要素を分離することで、①過去の政策運営の評価、②現在の物価変動の要因分析、③将来のインフレ率予測、に関する情報が増加すると期待できる。
一方、刈り込み平均指数から控除された品目の価格変動情報が、将来の物価変動に関する『先行指標』的情報を含む恐れもあるため、本指数を、将来を展望した場合の物価変動圧力を示す指標として利用する場合には、指数から控除された品目の価格変動が、いかなる要因により生じているかの分析を併用することがより望ましい。
キーワード:基調的なインフレ率、刈り込み平均指数、 個別品目の価格変化率分布、一時的な供給ショック
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