金融研究 第18巻第1号 (1999年3月発行)

信用リスクを反映した金融商品のプライシング

小田信之

 本稿は、取引相手等の信用リスクを反映させて、金融商品の理論価格を算定する各種の方法につき、包括的なサーベイ・解説を行う。
 はじめに、金融機関において信用リスクのプライシングを行うための実務的な考え方を整理する。具体的には、レプリケーションの考え方および割引率に織り込むリスクプレミアムの推定方法の2点を中心に検討する。ここでは、確定的なキャッシュフローをもつ金融商品を対象として、直観的に理解しやすいフレームワークで説明を行う。
 次に、デリバティブ商品を含めた任意の金融商品を対象とできる一般的なプライシング理論を紹介する。具体的には、先行研究で提唱されてきた各種プライシング・モデルの中から、ジャローとターンブル等によるモデル、ダフィー等によるモデル、ロングスタッフとシュワルツによるモデルの3つに焦点を当て、数理的な解説を行う。
 最後に、クレジット・デリバティブの理論価格を算定する方法について検討を加える。それまでに示した知識を前提として、各種のクレジット・デリバティブの類型ごとに、どのようなプライシング方法が有効であるかを議論する。
 信用リスクを反映させてプライシングを行うことは、競争的な金融市場に参加する上での重要な要素である。従って、理論と実務の両面において、本稿で扱ったような内容が一段と発展・浸透することを期待したい。

キーワード:信用リスク、アセット・プライシング、リスクプレミアム、クレジット・デリバティブ


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