金融研究 第17巻第6号 (1998年12月発行)

ニューラルネットワークアプローチによる経済分析(2)
— 通貨当局の外為市場介入への応用例 —

中田(黒田)祥子

 本稿は、政策当局が判断を行う際の行動について、「外為市場への介入行動」を例として、ニューラルネットワーク手法を用いた分析を試みるとともに、先行きの介入行動の予測可能性について考察を加えたものである。
 まず、ニューラルネットワークは、介入行動の事後的な検証を、かなり正確に行えることがわかった。さらに、この推計結果からみると、月次単位でみた過去の通貨当局の介入行動は、①(他の指標を一定とした場合)為替レートの変化率がある一定の水準未満の場合は介入しないが、その水準を超えた場合には急速に介入額を増やす、との非線形なスタイルであったこと、②為替レートの変化率のみならず、経済環境を形成するその他の指標(本稿では、貿易収支水準と購買力平価からの乖離)についても介入の判断材料にしていたこと、等の可能性があることが導き出された。同時に、通貨当局の政策反応パターンは必ずしも常に一様ではなく、各局面毎に異なったものであった、との推察が得られた。
 また、ニューラルネットワークを用いた介入の予測に関しては、①介入額の水準まで予測することは困難であるが、②介入の有無は(当局の介入スタンス自体に大きな変更がない場合には)まずまずの精度で予測可能であることがわかった。本稿の分析では、介入の予測精度にはなお改善の余地が残されているが、今後、市場がAI技術の発展とともに、これらの手法を用いることで介入をさらに高い精度で予測することが可能となった場合、不胎化された外為市場介入政策がシグナル効果を通じて、市場に及ぼす影響は小さくなる可能性があることを示唆している。従って、通貨当局としては、こうした分野のテクニカルな発展動向に注目していく必要があると考えられる。

キーワード:ニューラルネットワーク、非線形性、外為市場介入、介入予測


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