金融研究 第17巻第5号 (1998年11月発行)

株式持ち合いの変化と市場流動性

宇野 淳、川北英隆、大村敬一

 本稿では、上場企業の株式持ち合いの変化と市場流動性について大きく2種類の実証分析を行った。
 第一に、株式持ち合いの決定要因について検討した。因子分析により持ち合い特性を抽出することを試みたところ、総資産や売上高といった企業規模や企業グループへの帰属が、持ち合い水準の重要な決定要因となっていることが判明した。最近では、企業収益率や経営の安定性との関係が強まってきている。また、企業規模が大きいほど、借入比率が高いほど、また、企業の収益率が低いほど、株式持ち合いが解消される。
 第二に、持ち合い比率と市場流動性の関係について検討した。流動性の指標としては、Kyle[1984]モデルを基礎にして、日次株価変化率と売買高データから銘柄毎に推計したものを使用した。まず、持ち合いは市場の流動性を悪化させるという仮説を検証したところ、仮説を支持する結果が得られた。次に、株式持ち合い比率の変化が市場の流動性にどのような影響を与えるかについて検証した。そこでは、持ち合いの変化が銘柄毎の市場流動性に対して2つのルートを経て影響すると考えた。一つは株式の流通量自体が流動性に直接影響する部分(「持ち合いの流動性効果」という)であり、もう一つは持ち合い変化の情報から、市場がその変更動機や企業の状況を探り、間接的な形で企業評価を行うことによって売買高が変化し、流動性に間接的に影響する部分(「持ち合いのシグナル効果」という)である。本稿では、この両効果の大小関係によって、必ずしも、持ち合いの解消(拡大)が流動性を向上(悪化)させることにはならないことを示した。また、これらの効果は、企業収益が向上しているのかどうか、企業が企業グループに帰属しているのかどうかによって、現れ方が異なることも予想される。検証結果によれば、シグナル効果は、企業収益向上の有無にかかわらず見られる重要な要因であることが確認された。また、企業グループに属する業績悪化銘柄では、持ち合い解消は流動性に明確な影響を与えないが、非企業グループ銘柄では流動性が悪化することがはっきりと確認された。企業グループに帰属することによって、市場のネガティブな反応を抑制する一定の効果があるとみられる。

キーワード:株式持ち合い、市場流動性、マーケットインパクト、シグナル効果、企業収益、企業グループ


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