金融研究 第17巻第4号 (1998年10月発行)

信託を利用した流動化スキームと会計問題

秋葉 賢一

 最近、流動化に関して信託を用いたスキームの利用が増えているが、現状、会計面での取り扱いが必ずしも確立されていない。そこで本稿では信託を利用した流動化スキームについて、主に以下の2点に絞り検討を行った。
 第一の問題は、委託者が信託財産を売却処理できるかという委託者における信託財産のオフバランス化の問題である。これまでは一般的に受益者があたかも信託財産を保有しているかのような処理がなされてきた。しかし、信託を利用した流動化スキームにおいては、しばしば信託受益権を優先劣後に分割する実務が採られるため、信託受益権の売却をもって信託財産そのものが売却されるものとみなすというこれまでの考え方が当てはまらなくなる。そこで本稿では、流動化の実態を適切に反映すると考えられている財務構成要素アプローチを手掛かりにした考え方を提示した。
 さらに、連結ベースで考える場合、オフバランス化が認められるためには、上述した売却処理に加え、譲受者が譲渡者の連結対象とならないことが必要となる。本稿では、わが国の新たな連結基準に照らして信託は委託者の連結の範囲に含まれないと解釈した。
 第二の問題は、オフバランス化が認められた以降において信託財産に関わる受益者の損益をどのように測定するかという問題である。この問題は、税法との関わりが深いため立法論にはなるものの、受益権を優先劣後に分割し譲渡する流動化スキームにおいては、受益者が信託財産を直接保有するものとして考えず、信託の「導管性」を損益についてのみ認めることにする方が有用であろう。本稿では、こうした考え方に基づき、受益者の観点からの信託財産に生じる損益の測定や、優先劣後に分割された受益権への損益の分配といった問題に対する1つの解答を試みている。

キーワード:信託、オフバランス化、流動化、SPE、財務構成要素アプローチ、連結会計、導管性


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