近年、国際金融市場では、国際的な資本移動の自由度が上昇し、金利裁定が国際的にも活発化している。その一方で、投資家のポートフォリオ構成は依然として国内資産保有比率が著しく高い、との事実が指摘される。こうした投資家の国内資産への偏向は、国際分散投資における「ホーム・バイアス・パズル」と呼ばれ、様々な論議を呼んでいる。無論、この問題については、データ・カバレッジといった計測上の問題も無視できないが、その影響を調整しても、従来の理論的・実証的研究の範囲では十分説得的な論拠は示されていない。
しかしながら、情報・通信技術革新や企業活動の国際化といった経済活動のグローバル化を促す動きも着実に進んでいる。また、ミューチュアル・ファンドを通じ、海外資産を保有しやすい環境が整備されつつある。従って、仮に現在のホーム・バイアスが、投資家の資本市場での最適化行動の結果であったとしても、今後、要素価格の均等化が進展することを通じ、将来的にバイアスが減少していくことも考えられよう。
今後、ホーム・バイアスが解消されるかどうか、そしてホーム・バイアスが解消されるならばその速度はどれほどなのか、といった問題は中央銀行の政策運営にとって大きな意味をもつと考えられる。
キーワード:国際分散投資、ホームバイアス
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