金融研究 第16巻第4号 (1997年12月発行)

ワークショップ「コンセプチュアライゼーションを巡って」
(報告論文)
コンセプチュアライゼーションが経済に与える影響のメカニズムに関する展望
― 経済史および経済学からの論点整理 ―

北村行伸

 本論文はグリーンスパン議長の問題意識の源泉となっていると思われる諸論文を手がかりに、経済史および経済理論からコンセプチュアライゼーションの含意について参考になる研究を概観したものである。
 先ず、コンセプチュアライゼーションを考える上で参考になるような経済史上の事象を展望した結果、経済成長には一定のパターンがあるということが判ってきた。それは (1) 労働力や資本などが流入することによる投入増加による成長、(2) 前方関連効果、後方関連効果として以前から知られていたネットワーク外部性、補完性、規模の経済性などによる同時的成長、(3) 技術革新が波及することによる生産性フロンティアのシフト、ということである。このパターンに照らし合わせて、現代のコンセプチュアライゼーションが、どの局面まで進んでいるのかを確認しておくことが重要である。敢えて言えば、(1)、(2)までは達成されつつあるが、(3)の利用度の向上・高度化(応用的技術革新)にまでには至っていないと考えられよう。その意味で、現時点での到達局面と将来に残された成長局面をはっきりと認識(区別)しておく必要があると思われる。
 次いで、経済学説からコンセプチュアライゼーションにどのようにアプローチできるかを展望してみた。とりわけ、この問題を考える上で重要な概念と思われる(1)費用逓減、(2)技術革新、(3)外部経済についてやや詳細に検討してみた。コンピュータ化社会では、ネットワーク外部性が生産性に寄与し、今後さらに大きな影響をもつであろうことはすでに多くの論者が指摘している。マーシャルが指摘した外部経済という概念は今日、ネットワーク外部性、補完性、地域集積などの概念で再び脚光を浴びている。コンセプチュアライゼーションを考える上でも、これらの概念は中心的な役割を果たすものと思われる。

キーワード:コンセプチュアライゼーション、知識集約化、収穫逓増、費用逓減、技術革新、外部経済


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