金融研究 第16巻第4号 (1997年12月発行)

ワークショップ「コンセプチュアライゼーションを巡って」
(報告論文)
情報化関連産業の成長とその捕捉における問題について

井上 哲也

 企業や家計での情報化関連支出の増加や情報化関連産業の成長を先行して経験してきた米国では、そのマクロ経済へのインパクトを十分認識できないというパラドックスに対する問題意識が学界、政策当局の双方に存在する。本論文は、既存の経済統計がこうした動きを捉えていないことにパラドックスの原因を求め、我が国の経済統計に即して具体的な議論・推計を試みたものである。
 まず、既存の統計から我が国の情報化の現状を確認した後、マクロ経済へのインパクトが、①情報化関連産業の産出が中間投入や投資に使用されることで総供給曲線をシフトさせる「サプライサイドの経路」と、②情報化関連産業の産出への需要増が総需要曲線をシフトさせる「ディマンドサイドの経路」の2つから生ずることを整理した。そして、インパクトの正しい予測のため、中間投入と投資との識別や、内製活動の捕捉を正確に行うことの必要性を示した。
 そこで、統計的把握が不十分であるが、定量的に重要とみられる領域として「ソフトウエアの内製開発」と「小規模企業による情報サービス生産」の2つを取上げ、やや大胆な仮定により推計を試みた結果、ソフトウエアの内製<95年>はフローで約13兆円、ストックで約30兆円と外製部分の3~4倍に達し、これを加えたソフトウエアの総投資規模は既に主力産業を凌駕していることや、小規模企業の生産額を加えると情報サービス産業の生産は約4割も増加することを明らかにした。最後に、こうした問題に対して統計的捕捉を改善する方策として、情報化関連産業の産出のユーザー産業を通じた調査の充実や、情報化関連産業自体に対する調査カバレッジの引上げ、民間統計の活用の検討等を提案した。

キーワード:コンセプチュアライゼーション、情報化関連投資、統計不備説、情報サービスの「内製」、93SNA、資本としてのソフトウエア


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