金融研究 第16巻第4号 (1997年12月発行)

ワークショップ「コンセプチュアライゼーションを巡って」
(報告論文)
生産性パラドックスへの一つの解釈
— Static and Dynamic Unit TFP の提案 —

黒田 昌裕、野村 浩二

 グリーンスパン議長が提起した生産性の測定に関する、いわゆる"Conceptualization Problem"と言われる課題は、近年のOECD各国における、マクロレベルでの生産性成長率の1970年代の後半以降の下降傾向と経済の回復期における実質投資の伸びとに関して見られるある種パラドクシカルといえるような傾向に対して、情報、通信技術の革新的進歩が如何に関連しているかを問うものであると考えられる。全要素生産性(TFP)の測定に関しては、産出・投入両面の数量・価格の測定に誤差が含まれており、それを解決することもこの問題を扱う上で一つの重要な視点である。
 しかし一方で、近年の技術が経済構造に関して従来型の技術と異なった特性をもっているとすれば、その内容を明らかにし、生産性の動向をその技術特性を捉える形で定義しておくことも重要である。
 この論文では、後者の立場にたって、技術の相互依存関係を静学的、動学的に捉えることによって、生産性の変化のもつ意味を近年の資料から明らかにしようとしたものである。ここでは、ユニット・ストラクチャーという概念を用いて、静学的ユニット TFP および動学的ユニット TFP という尺度で通常の TFP 尺度の拡張を試みる。資本係数の近年の動きの特性を反映した形で動学的ユニット TFP を推定してみると、近年の生産性の上昇率は通常のTFP 上昇率の値をかなり上回ったものとなり、近年のパラドクシカルな現象は必ずしも逆説的なものではないことが明らかとされる。

キーワード:コンセプチュアライゼーション、生産性パラドックス、Dynamic Inverse理論、全要素生産性(TFP)、静学的ユニット・TFP、動学的ユニット・TFP、ユニット・ストラクチャー


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