金融研究 第16巻第3号 (1997年9月発行)

政策株投資が抱えるマーケットリスク量の試算
─ EaRモデルを適用して ─

吉藤茂

 本稿では、期間損益のブレをリスクとして計測するEaRモデル(アーニング・アット・リスク)を一般的な銀行勘定バランスシートに適用し、政策株投資が抱えるマーケットリスクのマグニチュード及びその特性を定量的に把握する。
 シミュレーション結果によれば、期間損益を期中実現損益のみで把握する(決算上認識しているリスクを算出する)場合にも、償却負担のある株式のリスクは他の資産(預貸や債券)に比べ極めて大きいことがわかった。この決算上認識される株式リスクは、簿価の上昇により最近急拡大してきた事実が指摘可能で、株式保有の意義が今改めて問い直されているといえよう。一方で、簿価のレベルにより算出されるリスク量が大きく異なるというEaRモデルの欠陥も指摘可能で、本質的なリスクを把握するためには時価ベースでのリスク管理へ移行する必要があろう。

キーワード:政策株、アーニング・アット・リスク(EaR)、マーケット・リスク、期間損益、低価法、償却負担、バリュー・アット・リスク(VaR)


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