金融研究 第16巻第3号 (1997年9月発行)

物価の基調的な変動を捕捉するための指標の構築とその含意

白塚 重典

 中長期的な経済成長を促進するための環境を整える基礎的な条件として物価安定が重要との点については、異論は少ないであろう。しかしながら、金融政策運営上の物価安定の定義については、必ずしもコンセンサスが得られているわけではなく、物価上昇率の望ましいレベルを計数的に示すのは容易ではない。また、明確な定義を与えた場合にも、観察される消費者物価指数や卸売物価指数、GDPデフレータといった各種の物価指標の変動には、さまざまな一時的なショックが影響している。このため、物価安定の基盤が維持されているか否かを判断することは、極めて難しい。
 本稿では、これらの問題を踏まえ、金融政策運営上、目標とすべき物価安定の定義を再検討するとともに、各時点において価格変動が著しく大きい品目の影響を控除した異常値修正指標(limited influence estimator)を利用することにより、物価変動の基調が把握できるかどうかを検証する。その分析結果からは、・異常値修正指標を利用することで、円高や原油価格高騰といった一時的な攪乱要因の影響が調整され、基調的な物価変動がより的確に捕捉されること、・前年比・前月比の指標を組み合わせてみることにより、基調的な物価変動の水準と方向性の評価がより明確になること、といった点が明らかとなった。これらの分析結果は、異常値修正指標が、物価の基調変動に関する情報を提供する有用な指標の一つとなり得ることを示しており、今後ともその活用の方策を検討していくことが重要と考えられる。

キーワード:金融政策、物価安定、基調的物価変動、異常値修正指標、物価変動分布の歪みと裾の厚さ


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