金融研究 第16巻第1号 (1997年3月発行)

為替レート変動・企業の国際化と企業総価値
— デイリー・パネル・データによる実証分析 —

馬場 直彦、深尾 京司、佐々木 百合

 1995年の前半期の急激な円高局面においては、輸出依存度の高い企業の株価が大きく下落した。為替レート変動の企業総価値に対する影響経路の中でも、近年の日本企業による海外生産活動の拡大は注目に値する現象である。日本企業の海外生産活動の中には、日本への逆輸入を主な目的としているものも多い。このような現地法人を設立することは、ちょうど日本に対する輸出に特化する外国企業を持つことに等しいため、仮に円高が起きれば本社企業の利益は増加し、その企業総価値は高まると考えられる。
 本論文では、為替レート変動と企業総価値との間の関係について理論的な背景を明らかにしたうえで、日本の製造業の中でも特に輸出依存度・海外生産比率が高い電気機械産業に属する企業から構成されるデイリーのパネル・データを用いて実証的に検証を行っている。
 実証分析の結果、サンプル期間を長期間でとった場合を中心にして、円高(円安)局面では、為替レート変動は輸出依存度の高い企業の株価を引き下げる(引き上げる)一方、海外進出比率が高い企業の株価を引き上げる(引き下げる)効果が統計的に有意に存在することが明らかになった。また、実証結果を基にした試算によると、10%の円高による製造業全体の企業総価値の下落約0.6%(1994年度経常利益の約29.0%に相当)のうち約0.2%(同約7.4%に相当)が企業の海外進出により相殺されていることが分かる。

キーワード:為替レート変動、企業の国際化、企業総価値、パネル・データ、株価変動


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