金融研究 第15巻第5号 (1996年12月発行)

構造変化と単位根・共和分仮説
─ マクロ経済時系列への応用 ─

国友 直人

 本稿ではまず時系列分析においてこれまで知られている単位根検定(unit roots tests)及び共和分検定(co-integration tests)の方法が経済時系列のトレンドに構造変化が存在する場合には誤った結果をもたらす可能性が大きいことを指摘する。次に構造変化を含む線形時系列モデルにおいて単位根仮説及び共和分仮説に対する新たな検定統計量のクラスを提案する。尤度比検定を含むこのクラスの検定統計量は標本数が増加するにつれてブラウン運動の汎関数に収束することが示せるので、シミュレーションによりその極限分布の性質をより詳しく考察する。提案する検定を用いて外国為替レート(円・ドル・マルク)と日本の実質所得・消費系列を分析し、前者については単位根の存在に肯定的、後者については否定的な結果を得た。所得・消費の長期的変動の解釈としては共和分関係としてではなく、2つのトレンドの共変動関係と見なす方がより適当と判断される。マクロ経済時系列の実証分析において最近よく使われるようになっている単位根仮説や共和分仮説についての既存の検定方法を機械的に適用するよりも、むしろ経済構造の変化を適切に時系列モデルで表現することがより重要であろう。

キーワード:単位根・共和分問題、構造変化、見せかけの単位根、トレンドの共変動仮説


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