金融研究 第12巻第2号 (1993年6月発行)

江戸期小判の品位をめぐる問題と非破壊分析結果について

上田 道男

 江戸時代の代表的金貨である小判の品位は、9次にわたる改鋳のなかで大きく変動したが、幕府はこれを一切公表しなかった。明治期になって新政府による分析結果が公表されたほか、江戸期の金座の記録などの研究も進んだが、なお未解明の問題も少なくない。
 本論文は、国立歴史民俗博物館と共同で行った江戸期小判全10種類の非破壊分析の結果を示し、品位を巡る問題に考察を加えたものである。小判を対象とした本格的な非破壊分析はこれまでに例がない。
 今回の分析によって明らかとなったのは次の諸点である。(1)各小判の品位は種類によってかなり異るが、同一種類の中でのバラツキは少い。(2)外観が酷似している正徳小判と享保小判の判別法について、「光次」の極印を手がかりとする方法が有効と判断される有力な証拠を得た。(3)改鋳(品位低下)による小判表面の色の悪化を防ぐため、小判表面には「色揚げ」と称する表面処理が施されているが、色揚げ層の厚みや表層の金濃度の変化など色揚げの実態が判明した。


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