ディスカッションペーパーシリーズ(日本語版) 2018-J-14

中央銀行独立性の境界:非伝統的な時局からの教訓

アタナシオス・オルファニデス

非伝統的な政策が求められる時にあって、物価安定の責務を担う独立した中央銀行が優れた政策実績をあげるためには、いかなる制度的な枠組みが求められるだろうか。非伝統的な金融政策は様々な難しい課題をもたらす。中央銀行が大規模な資産購入を行うことは、名目金利のゼロ制約に対抗するうえで必要なことであるが、同時に、政府財政や所得分配に対して望ましくない帰結をもたらし、中央銀行のバランスシートに多大なリスクを蓄積させる。物価安定の定義に明快さが欠如していると、バランスシートを大きく拡大させることの正当性にも懸念が生じ、これらがあいまって政策展開を阻害する。物価安定の定義に明快さが欠けることは、中央銀行に、景気を浮揚させるために必要となる果断な量的緩和策を回避させ、代わりに低すぎるインフレ率を受け入れさせる。名目金利のゼロ下限制約に遭遇した日本銀行の経験は、2013年に採用した上下対称的なインフレ率2%という物価安定目標のように、明快な物価安定の定義が極めて有用であることを教えてくれる。

キーワード:日本銀行、ゼロ金利制約、量的緩和策、中央銀行の独立性、物価安定、インフレ安定目標、バランスシート・リスク


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