ディスカッションペーパーシリーズ(日本語版) 2016-J-12

労働法の実効性と紛争解決システムの機能
—集団的合意による法定基準の柔軟化とアメリカにおける雇用仲裁の機能の比較法的検討—

荒木 尚志

本研究は、労働者・就業関係の多様化に対して、現代の労働法がどう対応すべきかという課題について、(1)法規制の内容を集団的合意によって柔軟化することを認めるデロゲーションの仕組みで対応する方策と、(2)当事者の選任した仲裁人に、紛争の実態に即した柔軟な法適用を認め、それを終局的解決とする雇用仲裁の活用のように、画一的な法規範の硬直性を紛争処理のレベルで柔軟に対処する方策、の2つの施策がありうるとの視点に立って検討を行った。
(2)については、アメリカで活用されているが、これにはアメリカの特殊事情(陪審制の問題、柔軟・迅速・安価に雇用紛争解決を行う公的紛争処理機関の不存在等)が背景にあり、雇用仲裁のメリットとされている点は、日本では労働審判等の公的雇用紛争処理機関が既に提供しており、雇用仲裁のデメリットとして指摘されている点がより問題となること、(1)については、ドイツにおけるデロゲーション制度と比較すると、日本が事業場の過半数代表者に法規範の柔軟化を委ねている現状には大きな問題があること、しかし、デロゲーションの手続が未整備では多様化する雇用関係に対処する新たな立法も進まないことから、従業員代表制度等のデロゲーション手続の公正な担い手の整備が喫緊の課題となることを指摘した。

キーワード:デロゲーション、労働者、多様化、雇用仲裁、雇用紛争


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