ディスカッションペーパーシリーズ(日本語版) 2016-J-4

近世・近代日本貨幣史の基礎的研究

小林 延人

本稿は、平成27年(2015)11月における貨幣博物館リニューアルに伴う常設展示の見直しを念頭に置き、近世初期から近代初期に至るまでの貨幣発行・流通に関する研究のサーベイを行ったものである。一般来館者向けへの説明に供する、あるいは貨幣博物館として一般来館者向けの説明を行うための基礎資料として役立たせることを第一義とする。
近世については、(1)江戸幕府の貨幣政策、(2)幕藩体制下の貨幣経済の発達、(3)貨幣改鋳、(4)小額正貨の発行、(5)藩による紙幣の発行と普及、(6)信用経済の発達と両替商、(7)貨幣の使われ方、のトピックを設けた。(1)では、中世末期に銭貨流通が不安定化し、国際的商品として流通していた金銀が貨幣としての性格を強めたことを強調し、東アジア経済圏の中で日本経済を位置付けた近年の研究成果を反映させている。また(5)では、江戸中期以降に国内の貨幣経済が発達するのに伴い、小額貨幣に対する需要が拡大し、これが藩札発行を促した点を述べているが、これも地域経済の成長を重視する研究潮流を意識したものである。
近代については、(1)幕末維新期の貨幣流通、(2)近代的統一貨幣制度の成立、のトピックを取り扱った。明治元年(1868)に明治政府が発行した太政官札については、従来の研究ではほとんど流通せずに貨幣制度の混乱の一因となったとされてきたが、近年では正貨が不足する中で地域間の決済通貨として一定の役割を果たしたとも評価されはじめており、こうした議論を積極的に取り入れている。

キーワード:日本貨幣史、日本経済史、日本近世史、日本近代史、貨幣、藩札、太政官札


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