ディスカッションペーパーシリーズ(日本語版) 2015-J-8

金融機関に対する報酬規制は合理的か?

兒玉 啓宗

金融機関の報酬制度が金融危機の一因になったとの認識のもと、報酬規制の導入が国際的に進められている。こうした規制は金融機関の役職員に多額の業績連動型報酬が支給され、過剰なリスクテイクが行われたことを問題視しており、一定の類型に該当する報酬の禁止や変動報酬への上限設定など、インセンティブに対する直接的な介入を想定している。本稿では、欧米の金融機関に対する報酬規制を参照しつつ、業績連動型報酬の中心となるエクイティ報酬に焦点をあて、報酬規制と(1)過剰なリスクテイクの発生原因と考えられるコーポレート・ガバナンスとの関係、(2)短期的利益追求との関係について整理、検討を行っている。過剰なリスクテイクの発生原因については、役職員が株主利益を顧みずに自己利益を追求したという説明と株主利益によく規律づけられていたという説明が提示されているが、後者が妥当する場合には金融機関、特に銀行においてエクイティ報酬を利用することや、株主利益を追求するガバナンスのあり方にも影響が及びうる。また、短期的利益追求を抑制する規制を実現するためには報酬から生じる具体的なインセンティブを考慮する必要があるが、エクイティ報酬については規制対応に限界がある局面も想定されるように思われる。わが国企業の間では欧米と比較してエクイティ報酬をはじめとする業績連動型報酬は普及していなかったが、今後は導入が進んでいく可能性が高い。こうした中、本稿で指摘している点はわが国において将来的に論点となる可能性がある。

キーワード:報酬規制、金融規制、エクイティ報酬、デット報酬、コーポレート・ガバナンス、短期的利益


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