本稿では、本邦国債のゼロ・クーポン・イールド・カーブ(以下ゼロ・カーブ)を推定する際に、推定手法が満たすべき基準を提示したうえで、先行研究で用いられた各種の手法について比較分析を行う。
先行研究では、利付債の市場価格からゼロ・カーブを推定する多くの手法が提案されてきたが、任意の推定手法を選択して本邦国債のゼロ・カーブを推定すると、その特徴を的確に捉えられないおそれがある。本研究では、ゼロ・カーブの特徴を捉えるには、国債の市場価格への適合性が高く、適切な内挿がなされたゼロ・カーブを推定できることが望ましいと考える。そして、さまざまな推定手法の中から適切な手法を選択する基準として、推定値がゼロを下回らないこと、異常値をとらないこと、市場価格との適合性が高いこと、ゼロ・カーブの凹凸が小さいことに着目する。
分析の結果、本稿で扱った本邦国債の価格データについて、Steeley[1991]による手法が最適であるとの結論となった。実際、当該手法に基づく推定結果をみると、緩和的な金融政策が長らく続いてきた本邦におけるゼロ・カーブの特徴が十分に表現されていることが確認される。このように、ゼロ・カーブを適切に推定することは、日本の国債金利についてさまざまな分析を行ううえでの出発点として、重要性が高いと考えられる。
キーワード:利付国債、ゼロ・クーポン・イールド、区分多項式関数―本論文の付録データは2012-J-3付録を参照
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