ディスカッションペーパーシリーズ(日本語版) 2010-J-29

2次ガウス過程を用いた担保付貸出の解析的な損失分布評価

山下智志、吉羽要直

 本稿では、デフォルト強度と担保価値との間に相関がある場合を想定して、担保付貸出の損失の分布を評価する。具体的には、デフォルト強度は、Ornstein-Uhlenbeck過程に従う潜在変数の2次関数で表現されるとする2次ガウス過程でモデル化し、デフォルト強度の非負性を保つ。そのうえで、デフォルト強度が担保価値と相関を持つという条件を満たすようにモデル化して、担保付貸出の期待損失を解析的に評価する。また、損失分布の高次モーメントも解析的に評価する。
 担保による期待回収額は、山下・吉羽[2010]と同様に相関の影響を考慮して測度変換された生存確率を用いて表現されることを示す。具体的には、測度変換された生存確率を積分の測度として、担保価値の平均変化率を満期まで1階積分することにより、評価される。より一般的に損失の高次モーメントも、測度変換された生存確率を積分の測度として平均担保変化率のべき乗を1階積分することで評価できることを示す。また、数値例により、相関が損失の期待値・標準偏差に及ぼす影響を考察する。

キーワード:デフォルト強度、確率的回収率、2次ガウス過程、期待損失、測度変換


掲載論文等の内容や意見は、執筆者個人に属し、日本銀行あるいは金融研究所の公式見解を示すものではありません。

Copyright © 2010 Bank of Japan All Rights Reserved. 注意事項

ホーム