ディスカッションペーパーシリーズ(日本語版) 2010-J-7

金融政策コミットメントの効果:わが国の経験

白塚重典、寺西勇生、中島上智

 本論文では、日本銀行が行なったゼロ金利のもとでの政策コミットメントの効果を、実体経済の動学的な変化、および民間経済主体の将来期待の変化という観点から再検討する。具体的には、まず、イールドカーブの動きを通じて観察される先行き経済への期待形成の変化を、拡張ネルソン=シーゲル・モデルを用いて分析する。次に、確率的変動ボラティリティ付き可変パラメータ多変数自己回帰モデル(TVP-VAR)を適用し、将来期待変数を含めた、マクロ変数間の関係の変化を分析する。これら2つの異なるアプローチからはともに、(1)日本銀行による短期金利の将来経路に関するコミットメントは、金融市場、家計、企業の将来期待を変化させることに成功した、(2)しかし、こうしたコミットメントは、物価や生産といった実体経済の動学関係を変えるには至らなかったとの結論を得た。

キーワード:コミットメント政策、時間軸効果、ゼロ金利政策、ネルソン=シーゲル・モデル、可変パラメータモデル


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