ディスカッションペーパーシリーズ(日本語版) 2010-J-2

非接触インタフェース経由取引の技術とビジネスリスク管理の課題

廣川勝久

 金融サービスにおけるリテール取引は、サービス内容や提供範囲の拡大、関係する技術の進展、関係法令の見直し等に伴い変化を続けている。最近の関係法令の見直しにおいては、「資金決済に関する法律」(資金決済法)が平成21年6月に成立し、リテール取引の環境は新規参入等によるシステムの関係者の多様化を含めて、さらに変化していくとみられる。
 技術面では、高度なセキュリティ機能の実現を目的としたICカードの利用が目立つ。特に、非接触ICカード(以下、コンタクトレスICカードという)や一部の携帯電話に代表される非接触インタフェースを用いたリテール取引が注目を集め、高い利便性が評価されている。国内では、コンタクトレスICカード等による電子マネーのサービスが拡大しているほか、海外では、携帯電話の非接触インタフェース機能の実装仕様に関するガイドラインを策定して携帯電話の利用場面を拡大しようとする動きもある。今後、非接触インタフェースを利用したリテール取引が拡大し、決済システムに及ぼす影響も大きくなる可能性が高いと考えられる。
 本稿では、ビジネスリスク管理の視点から、非接触インタフェースをリテール取引で活用する際に留意すべき事項について検討する。非接触インタフェースに利用される技術の特徴等を概観したうえで、国内外の利用環境や運用方針を説明し、リテール取引の環境変化や情報セキュリティ技術をはじめとする技術環境の変化への対応が重要であることを説明する。また、具体的な運用事例の紹介も含め、非接触インタフェースの安全な利用への対応方針についても検討する。

キーワード:ビジネスリスク管理、リテール取引、非接触インタフェース、ICカード、携帯電話


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