メインバンクの貸出先企業からメインバンクでない他の銀行(非メインバンク)が資金を引き揚げた場合に、さらにメインバンクが貸出先企業への投資を継続するためには、資本市場から追加的な資金を調達する(いわゆる「メイン寄せ」)必要がでてくる。本稿は、この「メイン寄せ」に伴う諸問題を理論的に考察している。非メインバンクの投資量に対して企業の潜在的なキャッシュフロー(もしくは清算価値)が減少(もしくは増加)していくと、あるいは、貸出先企業が成功する可能性が低下していくと、メインバンクに対する脅しとして非メインバンクの資金引き揚げが機能することで、不良債権に対するメインバンクの効率的な対応を促してゾンビ企業問題を防ぎやすくなるだけでなく、メインバンクが情報収集の役割を積極的に引き受けやすくなることを示す。そして、1990年代末以降に生じた日本におけるメインバンク関係の刷新に関する効率性の面における評価と刷新されたメインバンクシステムに対する実証的な含意に対して、理論的な結果を提示する。
キーワード:流動性、メインバンク、ゾンビ企業
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