日本銀行金融研究所は、2009年3月11日、「偽造防止技術の新潮流:金融業務における人工物メトリクスの可能性」をテーマとして、第11回情報セキュリティ・シンポジウムを開催した。
金融取引においては、証券、紙幣、小切手、預金通帳等の物理媒体(人工物)が利用されており、当該取引の安全性や信頼性を確保するうえで重要な役割を果たしている。ただし、こうした人工物の偽造抵抗力は、デジタル画像処理技術をはじめとする情報技術の進展に伴い徐々に低下してきており、今後、技術進歩を取り入れた新しい偽造防止技術の活用が求められている。そうした技術の候補として、「人工物メトリクス」が注目を集めている。
今回のシンポジウムにおいては、人工物メトリクスのほか、代表的な偽造防止技術として、印刷技術、ホログラム、暗号ハードウエアの耐タンパー技術を取り上げ、これらの技術の研究動向やセキュリティ評価の現状と課題について議論し、環境変化に対応した将来のための新しい偽造防止技術に関する検討が必要ではないかという問題提起を行った。また、「偽造防止技術を評価するために」と題するパネル・ディスカッションにおいては、偽造防止技術の評価方法に関する検討を行う際には、技術情報を可能な範囲で公開したうえで、オープンな場における議論を通じて、偽造防止技術に関わる実務家や研究者の間で相互の理解を深めていくことが重要であるとの認識が共有された。
キーワード:暗号ハードウエア、印刷、偽造防止技術、人工物メトリクス、セキュリティ、バイオメトリクス、ホログラム
掲載論文等の内容や意見は、執筆者個人に属し、日本銀行あるいは金融研究所の公式見解を示すものではありません。