ディスカッションペーパーシリーズ(日本語版) 2008-J-14

「メイン寄せ」リスクと貸出債権価値の評価 —ゲーム論的リアルオプションによるアプローチ—

芝田 隆志、山田 哲也

 企業の信用力が低下した際に、貸出を回収する銀行に代わってメインバンクが追加貸出を行うことがある。こうしたメインバンクへのエクスポージャー集中は、一般に「メイン寄せ」と呼ばれている。本論文では、企業の業況が悪化していく際に、2つの銀行が貸出の早期回収を巡って競争する状況を考え、メインバンクが肩代り貸出を行う合理性がゲームの均衡として表現されること、回収・清算の最適タイミングや、メイン寄せリスクを考慮したうえでの貸出債権価値評価が導出できることを示す。モデルの比較静学より、i)企業の清算価値が低いほどメイン寄せが生じやすくなるとともに、いったんメイン寄せされた後は、清算を先送りする合理性が強まってしまう危険性があること、ii)貸出金利スプレッドが低いと、メイン寄せの発生を通じて貸出ポートフォリオの集中リスクが一段と高まる可能性があり、特に、企業の信用状況が悪化したときほど信用リスクの加速度的上昇をもたらす仕組みを内包してしまうことが判明した。また、こうした企業の業況回復に賭けるオプション価値は、回収や清算を先送りさせる合理性を定量的に評価する手法としても活用可能であることを示した。

キーワード:メイン寄せ、リアルオプション、ゲーム理論、貸出債権価値、集中リスク


掲載論文等の内容や意見は、執筆者個人に属し、日本銀行あるいは金融研究所の公式見解を示すものではありません。

Copyright © 2008 Bank of Japan All Rights Reserved. 注意事項

ホーム